ペット用建材の最新技術~その3

前回、前々回に引き続き、
この記事は2017年 日本建築学会大会(九州)研究討論会(パネルディスカッション)
「ペット用建材の最新技術の動向 子育て、高齢者世帯におけるペット対応を中心として」
のパネルディスカッション資料を読んだ私の感想を書きます。

紹介したい内容が盛りだくさんの為、3回に分けて記事にしています。
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ペット用建材の最新技術~その2

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では以下より、その3です。

3.内装材(壁紙など、壁のお話です。)

①ボード類

・壁紙とは別に、ボード類と呼ばれる内装材がある。
壁・天井に用いられる建築用ボード類は、下地材と仕上材に大別され、仕上材は、素材の風合いを生かした素地仕上材とボード表面に予め工場などで壁紙および塗装などの仕上材を施した化粧材に分類される。
化粧材の素材としては、木質系より無機質系のものが多くみられ、猫や犬は、爪とぎにより壁にひっかき傷を作る事が想定される為、比較的表面強度が高いと考えられる無機質系ボードが好まれると推察される。

・住宅用の下地材としてせっこうボードが多く使用されるが、近年様々な機能を付加したせっこうボードが発売されている。
割高ではあるが、仕上材の取り合い部分などから臭気や水分が侵入することもあり、これらの防止に多機能ボードは役立つ。

・調湿、VOC吸着性能がある下地材の上に仕上材の施工する場合は、機能が損なわれない仕上材を選ぶ事。清掃等メンテナンスについても注意が必要なものも多い注意する。

②壁紙

・猫の爪とぎ、引っかき、犬のかじりなど、鋭利なものへの強度、体のすり寄せ等の長期繰り返しに対する強度試験がある。壁紙工業会制定の試験を基本として実施した上で、更に厳しい試験を独自に実施している企業もある。

-爪のひっかき傷や犬のかじりなどについて
壁紙工業会制定「表面強化壁紙性能規定」準拠、「表面強化試験性能基準」判定4級以上を有することが表面強化壁紙の条件である。

5級から1級まであり、5級が一番強い壁紙のようです。我が家も、次に壁紙を選ぶ際は、この「表面強化試験性能基準」判定4級以上を目安に検討対象にしたいです。

-汚れ防止について
壁紙工業会制定「汚れ防止壁紙性能規定」がある。汚れ防止試験性能基準4級からほとんど汚れが残らない。

-他に壁紙工業会が制定しているもので、防カビ壁紙性能試験がある。

・消臭機能について

消臭性に関しては、珪藻土を使用したタイプも存在するが、壁紙自体の厚みが1mm程度であるため、左官仕上げと比較した場合に機能的に過剰な期待は無理である。施工の簡易性とコストを優先し、表面の風合いと補助機能としての消臭機能などを取り入れる場合には最適である。

壁紙に珪藻土が塗られた壁紙があるんですね。その厚みが1mm程度、珪藻土層が非常に薄い為、珪藻土の左官仕上げと比較した場合、余り期待はできないよという事ですね。

・壁紙における今後の動向

ペットの抜け毛が静電気で壁紙に付着することがあるため、美観、衛生の両面から帯電防止機能が見直される可能性があることを2011年に指摘したが、まだそこまで至っていない。~中略~現在、帯電防止機能を有する壁紙は、クリーンルーム等に使用される特殊なものしか存在しない。

壁紙に毛が着くのを防止する事で、住む人が掃除のしやすくなり、結果ノミ・ダニ等のアレルギー問題の解決に繋がり、喘息等を引き起こす危険の低減になるそうです。
静電気は乾燥してい湿度の低い冬に発生しやすいので、冬は壁にクイックルワイパーなどまめに掃除をした方がいいんだなと知りました。
反対に、湿度の高い梅雨時期に付着が起こると粘着性を帯びた付着となり、掃除がしにくいようです。
うさぎの毛は舞いやすいので、犬や猫以上に掃除に気を付ける必要がありますね。

③左官材

・左官材として、漆喰壁、珪藻土、砂壁などがある。
汚れが染み込んでしまい、ふき取りが困難であったり、傷が付き易いものが多い。トップコートで処理する事で、表面の汚れや傷をつきにくくする事が可能。

・ペット共棲による室内壁材として使用する場合の留意点

ペットによる汚れや傷が最も付き易い腰壁部分までは耐汚性や耐傷性に優れた腰壁パネルや腰壁シートを使用し、ペットが触れない壁面上部および天井面には、意匠性や調湿性、悪臭低減効果などの機能性を持った左官材を使用するという方法が推奨される。

・ペット共棲に一番効果的なもの
ペット臭低減の機能面では、珪藻土などの多孔質素材を利用した左官材が効果的。
もっとも効果的な対策は、天井面へ左官材を施工する事。汚れや傷を回避でき、かつ珪藻土壁の特徴である調湿効果や悪臭低減効果を有効に利用することができる。
天井は壁に比べて面積が広く開口部もなく、家具でも遮られない。気温や気流で湿気や有害物質が上昇し、効率よく各機能が発揮される。

・多孔質素材
珪藻土の他に、炭、ゼオライト、白洲などがあり、備長炭をチップ状にし、表面処理した左官材もある。この備長炭を使用した左官材は、調湿性や悪臭低減に加え、ペットの鳴き声への反響音を軽減する吸音・遮音効果もあり、ペット共棲の内装材として有効。

④室内用塗料
・ビニールクロスの上から塗れる、汚れ防止塗料がある。

⑤内装材まとめ

これまでの調査結果から、ペットと共棲する住まいの壁・天井材としては、ペットの手足が届く範囲である腰壁部分には表面強化性に優れた仕上材を用い、それよりも上部の壁や天井には調湿性や臭いの消臭性、VOCの吸着性など空気環境の向上を促す機能のある仕上材を施工するのが望ましいと考える。
その際、腰壁部分には表面強化性に優れる腰壁シート等を用いるのはもちろん好ましいが、3.2.8で紹介した猫用の造作壁や爪とぎ用保護シート等、後付け出来るものを施工するのも一つの手法として検討できる、また腰壁シート等の仕上材を比較的簡易に貼り替えできるような、リフォーム性を考慮した下地材は現存しておらず、商品や使用の開発を期待したい。

以上です。

この冊子を作られた方の「人間とペット双方が幸せと感じる毎日を過ごせますように…」という深い愛を感じました。

冊子の最後のページに総括があり、こう締められていました。

建築学会大会におけるパネルディスカッションということで、材料施工分野にこだわらず、「我が家でペットを飼っている」という方にはぜひ気軽に聴きにきていただきたいと思っている。今回の成果がペットを飼われている一人でも多くの方、そして一匹でも多くのペットが幸せに暮らしていけるように、人間とペットの共棲に役立っていただけることを、心から願っている。

また、以下のような内容も書かれていました。
・ペット用の建材が発売された当初は、動物よりも飼い主である人間にとって便利であろうと思われる建材が多く見られたので、人間とペットの共棲ができるという観点で調査を行われたこと、ペットは色々な習性による行動を起こすが、行動を制限するのではなく、行動を起こしても臭気や傷が目立たない建材が必要である。

・犬や猫の飼育頭数は減少していますが、市場は拡大しています。今後もペット用の建材については、さらに拡大し、利便性や高級化されていくだろうとも予測されています。

私は、愛兎きなこの為の床材を血眼になって探していた時期もあり、何時間もネットサーフをして、断片的な情報を集め、実態把握に四苦八苦した事があります。
この冊子には、その全てが書いてありました…もっと前にこの冊子に出会っていれば、的を絞った調べもので済んだでしょうに!
内容量、項目も多岐に渡り、全てをご紹介できないのが残念でなりません。

私にとって、建築と聞いても何も思い浮かぶものがありませんし、大学の先生の研究って、具体的にどんな事をやっているのかピンときませんでしたが、このパネルディスカッションの冊子を読んで、日常にとっても身近で生活がより良くなる為にどうすればよいのか、色々な方面から考えて改善していく沢山のプロ達が頑張っている事を知りました。
目には見えないですが、たくさんの方々がプロとして、建築の技術向上に邁進して下さっているのですね!とても頼もしいです。

これ、便利だな~なんて気軽に導入した腰壁シートにも、知恵と汗の結晶なのか!と改めて感心しました。
きなこのおかげで、とても楽しい毎日を過ごせるだけでなく、今まで感じる事のなかった広い世界を感じる事ができました。

 
 

ペット用建材の最新技術~その3」への4件のフィードバック

  1. ピンバック: ペット用建材の最新技術~その1 | Tom Lab

  2. ピンバック: ペット用建材の最新技術~その2 | Tom Lab

  3. お久しぶりです。

    とても面白かったです。
    こういう研究をされている人がいるからこそ、人間やペットも快適に共存していくことが出来るのですね。

    我が家は賃貸住宅ですので、勝手代えることはできません。

    しかも壁紙が布なんですよ!

    私はアレルギーを持っているので、気をつけていかなければならないなぁと思いました。

    とりあえず、へやんぽの後は、コロコロをかけ、ウエットティッシュでフキフキです。
    小さいことですがやれることをやろうとおもいます。
    それが、家族もブレアちゃんも快適に過ごして行ける方法ですものね。

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    • 玲子さん、コメントありがとうございます!
      私も今回、初めて建築学会の方の話を伺い、陰で頑張るプロ達に感激し、ブログを書きました。
      もっと様々な活動がされていて、どれもとても面白いものです。もっと広まればいいのにと思います。

      お掃除、大変ですが、アレルギーだと必須ですね><
      私も牧草の穂の実に鼻がくしゅくしゅします。。小さな事でも日々きちんとやるのは、何より大事な事だと思います。積み重ねです。お互い幸せな毎日の為に、できることをちょっとずつ、頑張りましょう(*^^*)

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